音楽と美術

昨日、とある年齢の近い画家の個展を訪れた。これまで、美術館に行く機会はあったが、作者自身と話をしながら鑑賞するというのは初体験だった。

私は抽象画が好きである。生きていると様々な抽象概念(生、死、愛など)についてふと考えることがある。そういった目に見えない、特定の形を持たない概念を具体的に目に見えるように表現するとどうなるのか、という点に興味がある。

今回鑑賞した個展にも抽象画が多数展示されていた。作者と対話していると、自分がイメージしていなかったような創作手法が次々と明らかとなり、大変刺激的な時間となった。

常々、音楽は視覚を用いず、聴覚・時間変化を特徴とする表現、絵画は聴覚を用いず、視覚を特徴とする表現と考えてきた。絵画は、「一瞬」を切り出すという特性上、表現に限界があると思っていたが、その限界は限りなくないに等しいように感じられた。この個展では、「顔を描かない」ことで、異なるパラレルワールドを行き来するような多次元的な表現を生む効果に、最も感銘を受けた。

これまで音楽の文脈でしか表現を考えてこなかった。美術に取り組む人とはじめて表現について話すことができ、新たな世界が見えた心地がした。今後も音楽以外の表現者と接する機会を持ち、自身の表現にも取り入れていきたい。

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